私は幼少の頃より機械いじりが好きでした。しかし、電気については、プラモデルやラジコンで電池とモータを配線したり、オートバイのバッテリーやウィンカーの交換をする程度でした。電気については知見がないに等しく、苦手というよりもわからないということで、大学進学時は機械工学を選択しました。大学に入ってからも特に電気の基礎知識を学習することもなく、そのまま卒業を迎えました。
ポンプメーカで有名な荏原製作所の子会社である荏原サービスに入社後、新入社員研修で初めて「電気の基礎知識」を学びました。講師は同社で長年にわたって電気制御機器のメンテナンスに携わられた経験のある大先輩でした。研修では、荏原製作所のテキストを基にしてシーケンス制御の基礎について座学と実技を教えていただきました。
その時に教えていただいた印象的な話があります。
「もし、一緒に作業している人が電気設備に感電したままで動けなくなっていたら。思いっきり飛び蹴りをしてください。特に普段から恨みがあるような先輩だったら、遠慮なく全力でドロップキックをしてあげてください。もし、感電している体が電気設備から切り離されて、運よく生きながらえたら、その先輩とご家族に感謝してもらえるかもしれません。人を蹴って感謝されるのは、こんな時くらいです。」
電気系統で感電すると筋肉が硬直して体の自由度が失われること、自分自身が大地に足裏でつながっていたら、大地間で通電してしまい一緒に感電してしまうこと。なぜ、飛び蹴りするのかと電気の流れをわかりやすく教えていただけました。その後、私は幸いなことに何度か軽微な感電トラブルは経験しましたが、厳しい先輩や同僚にドロップキックをくらわすことはなく、定年を迎えることができました。
電気は目に見えない怖さと瞬間的な感電、火災、上流側に波及する事故につながる恐ろしさがあります。
その後、労働安全衛生法による「低圧電気取扱特別教育」を修了後、顧客設備での保守作業や、工場設備における保全作業に携わりました。40歳台で第二種電気工事士、第一種電気工事士の資格を取得し、59歳で2級電気工事施工管理技士の資格を取得しましたが、知れば知るほど、電気事故の恐ろしさを痛感してきました。
私は、当事務所でのコンサルタント活動において、工場設備管理をされている方、フィールドメンテナンスに携わられている方に私なりに習得した電気の知識や経験をお伝えし、作業者も設備も被災しない安全な設備管理ができるようご支援したいと考えております。
※写真は、1987年当時の新入社員教育時の電気の基礎知識の資料(荏原製作所様資料を引用)と私の電気研修初日の日誌です。